むらさきのスカートの女|彼女は本当に「変な人」なのか?
あらすじ
「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導し……。ベストセラーとなった芥川賞受賞作。
ただの観察日記ではない…
むらさきのスカートの女は、一週間に一度くらいの割合で、商店街のパン屋にクリームパンを買いに行く。わたしはいつも、パンを選ぶふりをしてむらさきのスカートの女の容姿を観察している。
このように語り手の女の観察日記のような形式で物語は進んでいきます。
読んでいくうちに、どんどん感じる違和感。
むらさきのスカートの女も気になりますが、私は語り手である「自称・黄色いカーディガンの女」の方が気になりました。
読んでいくうちに、むらさきのスカートの女よりも「黄色いカーディガンの女」の方がおかしいのでは?と感じずにはいられませんでした。
友達になりたいけど、どうすれば良いのか分からない
黄色いカーディガンの女はむらさきのスカートの女と友達になりたくて、自分の職場に彼女が応募するよう仕向けます。
その描写もすごく面白くて、一人でニタニタ笑ってしまいました。笑
求人情報誌が新しく発行されるたびにコンビニの雑誌コーナーまで取りに行き、それを専用シートに置くのはわたしの役目
そんなことするより、サクッと知り合って自分の職場に誘えば良いのに!
なんて思っちゃう自分と、黄色いスカートの女の気持ちが少し分かる自分がいる。
あの子素敵だなぁ、友達になりたいなぁと思う人っていますよね。
でも、中々自分からは話しかけられない。
拒絶されたら怖い、そもそも何を話せば良いのかわからない…。
黄色いカーディガンの女も、もしかしたら「何を話せば良いのかわからない」から、観察して様子を伺っているのかもしれない。
そう考えると、自分の中にも黄色いカーディガンの女の要素が少しはあるのかも…。なんて思ったり。
何事も度を越さないようにしないといけませんね(^◇^;)
むらさきのスカートの女は意外と普通の女の子かも?
読み進めていくうちに、むらさきのスカートの女は「意外と普通じゃん」と思えてきました。
黄色いカーディガンの女と同じホテルの清掃バイトを始めるのですが、挨拶もできるし仕事を覚えるのも早い、先輩スタッフと雑談もできるなど意外と社交スキルがあることがわかります。
それに比べると語り手の女はまるで幽霊。
職場の人からは存在を「自然と無視」されている状態。
むらさきのスカートの女とも全く会話しようとしません。
もしやこの語り手は本当に幽霊なのだろうか!?と疑ってしまうほどでした。
そこからさらに黄色いカーディガンの女の執拗な観察行為はもうストーカー。
いや、最初からずっとストーカーなんですけど(;゜0゜)笑
ストーカー行為に拍車がかかっていき、読んでいる間ずっとザワザワと胸騒ぎが止まりませんでした。
まとめ
むらさきのスカートの女の印象が物語を通して、どんどん変化するのが本作の見どころではないでしょうか。
そして、本当におかしい・奇妙なのは誰?と考えてはゾワゾワする…。
読んだ後もしばらくは余韻に浸るほど、物語の中に入り込んでしまいました。
こんな作品を書ける今村夏子さん…おそろしい子っ!!
最後までお読みいだだき、ありがとうございました。
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