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青春小説と侮るなかれ!主人公の復讐方法がとんでもなかった件|ひらいて(綿矢りさ)

子供の頃から青春小説はあまり読んでこなかったのですが、昨年映画化された本作の予告映像を観て興味津々。

 

 

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ふんわりしたイラストの表紙からは想像もつかないくらい、えぐい内容です。さすが綿矢りさ。爽やかな青春小説は書かないのね。

 


ひらいて(新潮文庫)【電子書籍】[ 綿矢りさ ]

 

 

あらすじ

華やかでモテる女子高生・愛が惹かれた相手は、哀しい眼をした地味男子。自分だけが彼の魅力に気づいているはずだったのに、手紙をやりとりする女の子がいたなんて。思い通りにならない恋にもがく愛は、予想外の行動に走るーー。身勝手にあたりをなぎ倒し、傷つけ、そして傷ついて。芥川賞受賞作『蹴りたい背中』以来、著者が久しぶりに高校生の青春と恋愛を瑞々しく描いた傑作小説。

 

 

クラスの中で目立って人気のある男子よりも、目立たない地味な男子を好きになる気持ちは分かる。「自分だけが知っている彼の魅力」という優越感に浸れるのよね。人気アイドルグループの中であまり目立たない子を応援したくなったり、セーラームーンでは主人公のうさぎちゃんじゃなくて、他の子を推したりする感覚と似ているような気がする。ちなみに私はセーラームーンの中では美奈子ちゃん推しでした。(美奈子ちゃんも人気あるけどね!)

 

主人公は目立つタイプの女の子で、冒頭から予備校が同じ男子生徒に告白されている様子からモテることも分かります。そんなヒエラルキー上位の女の子が下位の男子に恋をするというのは、少女漫画でもありそうな設定ですね。メガネを外したらびっくりするくらいイケメンだったり。

 

そんな地味で珍しい名前の「たとえ」に彼女がいることを知り、しかもその女の子はクラスで浮いている「美雪」でした。愛とたとえ、美雪は高校一年生の頃に同じクラス。美雪は美少女で最初はチヤホヤされていましたが、糖尿病を患っていたためインスリン注射をお昼の時間に教室でしていることがきっかけでクラスから浮いた存在になったのでした。そんな美雪とたとえが手紙の交換をしていた事実にショックを受けたものの、愛は美雪に近づき友達になります。

 

そして、たとえを傷つけるために美雪にした事…。これにはびっくり。愛もだけど美雪もどうかしてる…というのが率直な感想でした。

 

そもそも愛はたとえを本当に好きだったのか。アクセサリー感覚で自分のものにしたかっただけなのでは。たとえを想う美雪の気持ちと愛の気持ちは全く別物に感じました。

 

 

美雪と愛の違い

 

正直な人は、人を信じる強さを持っていることを教えてくれました。うそをつく人は、人を信じる強ささえ持っていないことも。

 

美雪は愛のとんでもない行動を受け入れてしまうほど、人を信じきれる。でも愛は人を信じきれないから嘘をついてしまう。美雪と愛は全く正反対のタイプですが、だから余計に嫉妬心が芽生えたのかもしれません。

 

家から近い大学に入り、料理教室とヨガ教室に通いつつ、塾講師か家庭教師のアルバイトをして、難関大のサークルに入会し、出会ったなかで一番将来性のある男の人と付き合い、大学を卒業したら、すぐに結婚する。周りの状況と自分の能力に合わせて水のように生きる。

 

愛の将来設計は間違っていないかもしれませんが、完全に他力本願ですよね。たとえは頭が良いから将来性がある、と思ったのでしょうか。このように打算ばかりする愛は、本当は美雪のように真っ直ぐ生きたいのではないか。自分に持っていないもの(たとえからの愛情、正直な性格、人を信じれること)を持っている美雪が羨ましいから、傷つけたのではないと思いました。

 

 

愛が人に心を開けるようになるまでの物語

 

タイトルの「ひらいて」には二つの意味があるのではないかと思いました。心をひらく、身体をひらく。愛は身体をひらけても心はひらけない。そんな彼女が心をひらくようになるまでの物語だと思いました。

 

作中に出てきた「サロメ」も読んでみたくなりました。読んだら理解が深まるかな?

 

 

 

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